スクール便り

近年、日本における不登校の問題が深刻化しています。文部科学省の令和5年度調査によれば、小中学校での不登校児童・生徒は約34万人※に達し、過去最高を記録しています。その背景には、「無気力」や「やる気が出ない」といった精神的な要因が多く挙げられていますが、実際にはいじめや家庭環境、健康問題、社会的な孤立など、さまざまな原因が複雑に絡み合っています。

本記事では、不登校の原因を深掘りし、どのような対策が効果的かを解説します。また、不登校の生徒を支える具体的なケア方法や、予防のために家庭や学校が取るべき対策についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
※参照：令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

不登校の原因7選

不登校は日本における深刻な社会問題であり、文部科学省の調査によると、2023年には小中学生だけで約34万人が不登校状態にあると報告されています。不登校に至る原因は多岐にわたり、無気力ややる気の低下が主な要因として挙げられていますが、その背景にはさまざまな要素が絡み合っています。以下に、不登校の主な原因を7つ挙げて解説します。

不安や悩みがある

子どもは多くの不安や悩みを抱えることがあります。例えば、学校の授業についていけない焦りや、周囲の期待に応えられないプレッシャーなどです。不安が蓄積すると心身のバランスを崩し、不登校につながることがあります。

具体例として、学校での発表が苦手な子どもが、毎朝学校へ行くこと自体に強いストレスを感じ、結果的に家から出られなくなるケースが挙げられます。

いじめを受けている

いじめは、不登校の主な原因の一つです。直接的な暴力だけでなく、言葉の暴力や仲間外れなど、目に見えない形のいじめも深刻な影響を与えます。

例えば、SNS上でのいじめが原因で精神的に追い詰められた生徒が、学校生活を避けるようになることがあります。

人との関わりが苦手である

対人関係が苦手な子どもは、集団の中でストレスを感じやすく、学校に馴染めない場合があります。人とのコミュニケーションを避けようとする結果、不登校につながることも少なくありません。実際に、人前で話すことが苦手な子どもがクラスメイトとの関わりを避け、次第に登校しなくなるケースがあります。

勉強を嫌っている

学習への意欲を失い、勉強を嫌うことも不登校の一因です。特に、小学生や中学生の段階では、苦手な教科が増えることで自己肯定感が低下しやすくなります。たとえば、数学が苦手な生徒が成績の低迷を理由に「学校に行きたくない」と言い始めるケースが挙げられます。

家庭に問題がある

家庭環境の影響も見逃せません。親の離婚、経済的な困窮、または家庭内での暴力など、家庭内の問題が原因となることがあります。例えば、両親の不仲が原因で家族の中で孤立感を抱き、不登校となる生徒がいます。

障害や病気がある

発達障害や精神的な疾患を抱えている子どもも、不登校になりやすい傾向があります。これらの子どもたちは、周囲からの理解が不足していることが多く、ストレスを溜め込みがちです。例として、注意欠陥・多動性障害（ADHD）を持つ子どもが、授業中に集中できないことへの自責感から学校を避けるようになるケースがあります。

他にやりたいことがある

子どもが自分の興味や趣味に没頭するあまり、学校生活を重要視しなくなる場合もあります。特に、ゲームやSNSにのめり込むことで昼夜逆転の生活を送り、不登校になるケースが増えています。

不登校になってしまったときの対策

不登校が現実となった場合、子どもの将来を守るために早急な対応が必要です。文部科学省の調査では、不登校児童・生徒の多くが「無気力」や「不安」を抱えていると報告※されています。この状態を放置すると、子どもの心身の健康がさらに悪化する可能性があります。以下に、不登校に対応するための基本的な対策を解説します。

※参照：文部科学省委託事業不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要

家族や学校としっかり話し合う

子どもの不登校に向き合うためには、まず家族や学校との話し合いが重要です。子どもの現状を正確に把握し、原因を共有することで、解決への第一歩を踏み出すことができます。学校側と連携して対応することで、家庭だけでは難しい支援も受けられるようになります。

また、話し合いでは、子どもの気持ちを尊重し、否定せずに受け止めることが大切です。批判的な態度や無理な説得は、子どもの心をさらに閉ざす可能性があるため、慎重に進める必要があります。

メンタルケアに集中する

不登校の多くの原因は、子どもの心の健康状態に関連しています。そのため、子どものメンタルケアに集中することが大切です。カウンセリングや心理療法などの専門的な支援を受けることで、子どもが抱える不安やストレスを軽減することが期待できます。

特に、ゲーム課金や昼夜逆転などの行動が見られる場合、根底にある精神的な負担を解消することが重要です。家庭でも、子どもが安心して過ごせる環境を整えることが効果的でしょう。無理に学校復帰を急がず、子どものペースを尊重しながら心の回復を支援しましょう。

居場所を確保する

学校以外の居場所を確保することも、不登校の子どもにとって大切です。安心して過ごせる場があることで、孤立感を防ぎ、心の安定につながります。ここでは、具体的な選択肢としてフリースクールや他校への転校について解説します。

フリースクール

フリースクールは、不登校の子どもが自分のペースで学べる場所です。従来の学校とは異なる柔軟な学習環境が提供され、子どもの個性や状況に応じた対応が行われます。フリースクールでは、子ども同士の交流も大切にされており、安心感を持って過ごせることが特徴です。

他校への転校

環境を変えることは、不登校の子どもにとって大きなリセットの機会となります。他校への転校を検討する場合は、子どもの意思を尊重し、慎重に進めることが大切です。新しい環境では、これまでの問題を引きずらないよう、学校側と密に連携しながら子どもをサポートすることが求められます。

普通の学校への転校であっても、最初は不安を感じることがあるため、転校先の教員や同級生との適応を丁寧に見守る必要があります。

不登校の生徒の4つのケア方法

不登校の子どもを支えるためには、原因を理解するだけでなく、適切なケアを行うことが大切です。ここでは、具体的なケア方法を4つ紹介します。

肯定する

不登校の子どもが最も必要としているのは、自分を受け入れてもらえる安心感です。学校に行かないという選択を否定せず、「それでも大丈夫」という肯定的な態度を示すことで、子どもは安心して自分の気持ちを表現できるようになります。

子どもの行動を批判すると、自己肯定感がさらに低下してしまう恐れがあります。一方で、親や周囲が子どもの感情に寄り添い、受け入れることで、心の負担が軽減され、再び社会と関わろうとする意欲が生まれます。

好きなことをさせる

不登校の子どもが抱えるストレスを解消するためには、好きなことに取り組む時間を作ることが効果的です。趣味や興味を持つ活動に没頭することで、自己肯定感が向上し、不安や無気力感から少しずつ抜け出せる可能性があります。

学校以外の場で成功体験を積むことも大切です。例えば、絵を描く、音楽を聴く、運動をするなど、子どもが楽しめる活動をサポートすることで、心に余裕が生まれます。ただし、ゲームやSNSなど、依存しやすい活動に偏らないよう、バランスを取ることが大切です。

専門機関や支援機関を頼る

不登校の問題は、家庭や学校だけで解決できない場合があります。そのようなときは、専門のカウンセラーや支援機関の力を借りることが効果的です。専門家は子どもの心理状態を客観的に分析し、適切なアドバイスや支援を提供してくれます。

地域には、不登校やいじめに特化した支援団体も存在します。これらの機関を利用することで、子どもだけでなく親もサポートを受けることができます。適切な支援を受けることで、親子ともに問題解決に向けた具体的な道筋を見つけられるでしょう。

同じ境遇の人との関わりを作る

孤立感を抱えやすい不登校の子どもにとって、同じ経験を共有できる仲間とのつながりは大きな支えとなります。不登校やいじめで悩む親や子どもたちが集まるコミュニティに参加することで、自分が一人ではないと感じられるようになるでしょう。

同じ境遇の人と話すことで、共感や安心感を得られ、不安を軽減できる可能性があります。また、親も他の家庭の事例を知ることで、自分の子どもに合った対応策を見つけやすくなります。こうしたコミュニティはオンラインでも広がっており、手軽に参加できることが多いです。

不登校の原因を作らないための対策

不登校の原因を予防するためには、子どもの心と体の健康を守りつつ、日常生活の中で問題の兆候を早期に発見することが大切です。不登校が増加する背景には、無気力や不安が主な要因として挙げられており、これらに対処するための環境づくりが必要です。以下に、学校や家庭で実施できる3つの具体的な対策を説明します。

学校や親が子供を観察する

子どもの心の変化や行動の異常を早期に見つけるためには、日常的な観察が欠かせません。子どもの普段の様子や学校での振る舞い、家庭での態度に注意を払い、小さなサインも見逃さないようにします。例えば、会話が減少したり、表情が暗くなったりする場合、それがストレスや不安の表れである可能性があります。

また、教師と親が情報を共有することで、家庭と学校の両面から子どもを見守る体制を整えることができます。これにより、問題が深刻化する前に適切な対応が可能になります。

相談できる機会を作ってあげる

子どもが安心して自分の悩みや不安を話せる環境を提供することは、不登校の予防において非常に大切です。家庭内では親が積極的に子どもと会話をする時間を設け、子どもの気持ちに寄り添うことを心掛けます。また、学校ではスクールカウンセラーや相談室を利用しやすい雰囲気を作ることが求められます。

さらに、子どもが周囲の大人に相談しやすいように、親や教師が話しかける際には否定的な態度を避け、共感的な姿勢を示すことが重要です。このような取り組みにより、子どもは安心感を得て、問題を自分一人で抱え込むことを防ぐことができます。

健康状態に配慮する

心身の健康状態を維持することも、不登校の原因を防ぐための基本的な対策です。適切な睡眠、バランスの良い食事、運動などを習慣化することで、子どものストレス耐性を高めることができます。また、昼夜逆転やゲーム課金など、現代の子どもたちに特有の生活習慣の乱れを防ぐために、家庭内でルールを設けることも重要です。

心の健康については、ストレスや不安を軽減するためのリラクゼーションや趣味の時間を確保することが効果的です。特に、学校や家庭でプレッシャーを感じやすい子どもに対しては、余裕を持たせた生活リズムを整えることで、精神的な安定を図ります。

不登校の原因は複雑なためまずは子どもの状態を理解しよう

不登校は一つの要因だけでなく、無気力や不安、いじめ、家庭環境などさまざまな問題が絡み合った結果として現れる複雑な課題です。そのため、解決には子ども一人ひとりの状態を丁寧に理解し、原因に応じた対応を行うことが重要です。

家庭や学校、専門機関が連携し、子どもが安心して自分の気持ちを話せる環境を整えることが第一歩です。また、心身の健康状態に配慮しながら、無理に学校復帰を急がず、子どものペースを尊重することが大切です。子どもを取り巻く社会全体で支える姿勢が、不登校の改善と予防につながります。