スクール便り

近年、日本における不登校の児童生徒数は増加の一途をたどっています。文部科学省の統計によると、不登校の小中学生数は346,482人（令和5年度）と過去最多を記録しており、教育現場における大きな課題となっています。不登校の背景には、無気力ややる気の低下、昼夜逆転の生活習慣、さらには家庭内暴力やゲーム課金といった問題も挙げられます。

このような状況で注目を集めているのが「フリースクール」という教育の選択肢です。フリースクールは、不登校の子どもたちにとって新たな学びの場であり、成長の場として多くの可能性を秘めています。本記事では、フリースクールについて詳しく解説し、その費用、授業内容、メリット・デメリット、そして適した人について紹介します。
参照：令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

不登校の子どもが通うフリースクールとは

不登校の子どもたちが通うフリースクールは、学校に通えない子どもたちに新たな学びの場と居場所を提供する教育施設です。多くのフリースクールでは、子どもたちの個性を尊重しながら、それぞれのペースに合わせたサポートを行っています。従来の学校教育の枠にとらわれず、子どもたちが安心して成長できる環境を重視しています。

対象年齢

フリースクールの対象年齢は幅広く、小学生から高校生相当の年齢までを受け入れている施設が一般的です。一部のフリースクールでは、未就学児や成人向けのプログラムを提供している場合もあります。特に小中学生を対象とする施設では、基礎的な学習支援に加え、社会性や自己肯定感を育む活動が重点的に行われています。

例えば、小学校中学年から高学年にかけての子どもたちには、少人数での学習時間が設けられ、学びの遅れを取り戻すだけでなく、自分のペースで新しい知識を吸収する機会が提供されています。

入学方法

フリースクールへの入学方法は、施設によって異なるものの、一般的には親子での見学や面談を経て、子どもに適したプログラムが提案されます。見学の際には、実際の授業の様子や施設の雰囲気を確認することが可能です。また、入学にあたり、子ども自身がその環境に納得し、安心して通えると感じることが重視されます。

例えば、あるフリースクールでは、最初の1か月をお試し期間とし、親子が環境に慣れるための時間を確保しています。フリースクールは、不登校の子どもたちにとって、教育を受ける場以上の意味を持っています。

対象年齢や入学方法の柔軟性により、多様な背景を持つ子どもたちが安心して過ごせる環境が整備されています。こうした取り組みが、子どもたちの新たな一歩を後押ししています。

フリースクールにかかる費用相場

フリースクールの費用は、施設やプログラム内容によって大きく異なります。一般的には月額数万円から十数万円が相場であり、年間では数十万円から数百万円に達することもあります。費用の主な内訳には授業料、教材費、課外活動費、さらに場合によっては送迎費用などが含まれます。

たとえば、週3日通学の場合は月額5～8万円程度、週5日通学する場合は10万円以上となることが多いです。また、自然体験や芸術活動など特別プログラムを多く取り入れるスクールでは、追加費用が発生する場合があります。

費用が高額になる一方で、自治体の補助金や助成金を利用できる場合もあり、負担を軽減できることがあります。フリースクールを選ぶ際には、料金だけでなく、提供されるサポート内容やカリキュラムの質を確認することが大切です。費用対効果を考えながら、子どもに最適な環境を見つけることが求められます。

フリースクールの授業内容

フリースクールでは、子ども一人ひとりの個性や興味を重視した多彩な学びの機会が提供されています。通常の学校とは異なり、固定化されたカリキュラムに縛られない自由なスタイルで授業が展開される点が特徴です。この柔軟な学びの場が、子どもたちの自己表現や主体性を育むのに役立っています。

講義

フリースクールの講義では、子どもの学びの遅れを補う内容から、興味を引き出す特別なテーマまで幅広い内容が扱われます。基礎的な学力を養う授業も提供されるため、不登校による学習の遅れを心配する保護者にとっても安心です。

例えば、あるフリースクールでは、少人数制のクラスで数学や英語などの基礎科目を個々のペースに合わせて学べる環境が整っています。

課外活動

講義だけでなく、課外活動もフリースクールの大きな魅力です。スポーツやボランティア活動、地域との交流など、子どもの社会性を育むプログラムが積極的に行われています。これらの活動を通じて、子どもたちは人と関わる楽しさを再発見することができます。例えば、地域のイベントに参加したり、仲間とチームを組んで活動する機会が用意されています。

自然体験

自然との触れ合いを重視するフリースクールも多く、子どもたちが屋外での活動を通じて感受性を高めることを目指しています。キャンプやハイキング、農作業といったプログラムが代表例です。

自然の中での経験は、心身のリフレッシュだけでなく、自主性や協調性を養うきっかけにもなります。例えば、週末に行われる野外キャンプでは、子どもたちが共同で調理をしたり、自然観察を楽しんだりする場面が見られます。

芸術活動

芸術活動を重視するフリースクールでは、音楽、絵画、演劇など、さまざまな表現活動が行われています。これにより、子どもたちは自分の感性や創造力を存分に発揮できる機会を得られます。例えば、毎月開催されるアートワークショップでは、絵を描くだけでなく、手工芸や楽器演奏にも挑戦できるようなプログラムが用意されています。

不登校の子がフリースクールに通うのメリット4選

不登校の子どもがフリースクールに通うことには、多くのメリットがあります。それは単なる学習の場としてだけでなく、子ども自身や家族の精神的な安心を得るための貴重な選択肢として機能しています。フリースクールは不登校の子どもたちの新たなスタートを支える重要な役割を担っており、特に以下の4つの点で大きな利点があります。

不登校後の居場所になる

不登校の子どもたちにとって、自宅以外の安心できる場所を持つことは非常に大切です。フリースクールは、従来の学校とは異なる柔軟な雰囲気の中で、子どもが自分らしく過ごせる環境を提供します。

例えば、学校での人間関係に悩んでいた子どもが、フリースクールで年齢や背景の異なる友達と気軽に話せるようになった事例があります。子どもたちは、個々のペースで活動に参加し、社会とのつながりを再構築することができます。

学習サポートを受けながら楽しく学べる

フリースクールでは、一人ひとりの学習ペースに合わせたサポートが行われています。学校での授業についていけずに自信を失っていた子どもも、ここでは分かりやすい指導を受けられるため、再び学ぶ喜びを感じられるようになります。

例えば、少人数制の授業やマンツーマンでの指導を通じて、苦手分野の克服を目指すことが可能です。また、一般的な教科だけでなく、興味を持ちやすいプログラムが多く提供されているため、学びが楽しいと感じられる環境が整っています。

親や家族の安心にもつながる

子どもがフリースクールに通うことで、親や家族も安心感を得られることが多いです。家庭で孤立しがちな子どもがフリースクールで充実した時間を過ごす様子を見て、親も安心し、家庭内の雰囲気が改善されるケースがあります。

さらに、フリースクールのスタッフは親とのコミュニケーションを大切にしており、進捗状況や子どもの変化について定期的にフィードバックを行うため、家庭と学校の間に信頼関係が築かれます。

病気や障害があっても通える

体調や特別な支援を必要とする子どもにも対応している点は、フリースクールの大きな特徴の一つです。例えば、軽度の発達障害や心の不調を抱えた子どもが、無理なく通えるよう配慮されたプログラムが用意されています。

一部のフリースクールでは、専門家が在籍しており、必要に応じて個別のカウンセリングや支援を行っています。こうした環境は、通常の学校では得られない安心感を提供します。

不登校の子がフリースクールに通うデメリット3選

フリースクールは多くの子どもたちにとって新たな可能性を広げる場である一方で、いくつかの課題も存在します。通学を検討する際には、そのデメリットについても十分に理解することが大切です。

高卒認定が得られない可能性がある

フリースクールでは、必ずしも高等学校卒業資格が取得できるわけではありません。一部の学校では高卒認定試験のサポートを行っていますが、すべてのフリースクールが対応しているわけではないため、別途準備が必要になる場合があります。

たとえば、進学や就職の際に高卒資格が求められる場合、フリースクールの在学期間中に高卒認定試験を受ける計画を立てなければなりません。

お金がかかる

フリースクールの費用は公立学校と比べて高額になることが多いです。授業料に加えて、課外活動や教材費、交通費などがかかる場合もあり、家計への負担が大きくなる可能性があります。

たとえば、月額数万円の授業料に加えて、キャンプや旅行などの課外活動に別途費用が必要になるケースがあります。そのため、費用面の事前確認と計画的な資金準備が必要です。

就活に不利になる

フリースクール卒業後、就職活動で一般的な学歴が求められる場面では、不利になる可能性があります。企業によっては、高卒や大卒といった学歴要件を重視する場合があり、これに該当しない場合、選考の際に制限を受けることがあります。

たとえば、企業の採用ページで学歴欄を見たときに「高等学校卒業以上」と記載されている場合、フリースクール卒業のみでは応募が難しい場合があります。

不登校後にフリースクールに通うべき人

フリースクールは、多様な背景を持つ子どもたちが自分に合った学びと経験を積むことができる場所です。特に特定のニーズを持つ子どもにとって、フリースクールは新たなスタート地点となる場合があります。

居場所が欲しい人

学校に馴染めず孤独を感じている子どもにとって、フリースクールは安心できる居場所となります。少人数制や自由な雰囲気の中で、他者と自然な交流を持てる環境が整っているからです。例えば、フリースクールではスタッフや同年代の子どもたちとの関係を築き、孤立感を軽減することができます。

学習や体験に前向きな人

フリースクールは、個々のペースに合わせた指導や興味を引き出す課外活動が用意されています。そのため、学校に通えない間に遅れてしまった学びや、通常の学校では得られない実践的な体験に関心がある子どもに適しているでしょう。例えば、あるフリースクールでは料理やプログラミング、自然体験など、実生活に役立つスキルを学べるプログラムが提供されています。

同じ境遇の人と時間を共にしたい人

フリースクールでは、不登校という共通の経験を持つ子どもたちが集まるため、気持ちを共有しやすい環境が整っています。同じような背景を持つ仲間と時間を過ごすことで、共感や絆が生まれ、自信を取り戻す助けになります。例えば、フリースクール内のグループ活動やディスカッションを通じて、自己表現の機会を得られることが多いです。

不登校になったらフリースクールの入学も検討しよう

不登校という状況に直面したとき、子どもにとって適切な環境を見つけることが大切です。フリースクールは、学校とは異なる柔軟な学びと過ごし方を提供する場であり、不登校の子どもたちに新たな選択肢を与えてくれます。

居場所としての安心感や、個別に対応した学習サポート、さまざまな体験活動を通じて、子どもたちは自信を取り戻し、自分らしく成長することができます。一方で、費用や進学への影響といった課題もあるため、家族でしっかりと話し合いながら最適な道を模索することが大切です。

不登校になった際には、フリースクールという選択肢を積極的に検討し、子どもの新たな一歩を後押ししてみてはいかがでしょうか。